今回は最も原始的でありながら、なかなか難しい精製方法である[Natural Process] ナチュラルプロセスについて。そもそもナチュラルとは何か、どんな特徴があるのか、なぜ難しいのか、など、この記事を読めばナチュラルプロセスの基本がわかる!
LuLaLo Coffeeが取り扱っているナチュラルプロセス商品
1. [Champasak province] Catimor / Anaerobic Natural Process
2. [Salavan province] Yellow Caturra / Anaerobic Natural Process
3. [Sekong province] Java / Natural Process
4. [Champasak province] Typica / Natural Process
▼ INDEX |
1. 「ナチュラル」は自然派の精製方法? |
2. 原始的なのに難しい「ナチュラル」 |
3. もはやナチュラルではない「ナチュラル」 |
4. アロマやフレーバーの特徴 |
1. 「ナチュラル」は自然派の精製方法?
糖度が20%を超えるコーヒーチェリーは立派な甘い果実であるにもかかわらず、ほとんどの人は脇目も振らずに種を取り出す。それもそのはずで、コーヒーチェリーにおける可食部はほんの数%しかなく、満足ゆくまで食べるにはあまりに面倒な果実であるからだ。しかし、その果実と種をまるっと使って精製することで、果実感を存分に味わえるコーヒー豆に仕立て上げることができる。それが「ナチュラル」プロセスである。
[乾燥したチェリー]
LuLaLao Coffeeが定める「ナチュラルプロセス」の定義は以下の通りである。
1. 完全なチェリーをそのまま
2. 発酵・乾燥させる
ナチュラルプロセスの定義を広く定めると、チェリー(外皮と果肉)がそのまま乾燥さえすれば「ナチュラル」と呼ぶことができる。つまり、木の枝についたまま乾燥してしまったチェリー、地面に落ちたまま乾燥してしまったチェリー、適切に収穫されてベッドの上で乾燥させられたチェリー、これら全てがナチュラルプロセスであると言える。特別な設備や水もいらず、コーヒーの木さえあれば放置していてもできるプロセスであり、その名の通りナチュラル:自然である。
2. 原始的なのに難しい「ナチュラル」
現代のように必死に精製してコーヒーを作り始める前は、おそらく放置された、もしくは地面に落ちたチェリーを煮出して飲んでいたのではないだろうか。 実際に、カルディに関する文献ではそのような一文が書かれている。
21世紀の現在、ラオスの農家にナチュラルプロセスは好まれていない。その理由は主に3つ。
1. カビが生えるリスクが高い。
ラオスの収穫期は乾季(10月 - 4月)に突入してからである。標高の高い農園では乾季であっても平然と雨が降る。なかなか天日干しをさせてもらえずにいると、水分をたっぷり含んだチェリーは一瞬にして白と黒のコントラストが美しいカビが生えたチェリーになる。
2. 時間がかかる。
さらにナチュラルは乾燥までにかかる時間が長い。ウォッシュドのパーチメントは2~3週間あれば乾燥する。一方、ナチュラルは1.5ヶ月から2.5ヶ月かかる。そのため、時間的にも非効率なのである。
3. 場所をとる。
精製はいかに熟したタイミングで収穫するかが重要であり、小規模農園がほとんどのラオスにおいて乾燥場の渋滞は死活問題である。乾燥場が埋まっているからといって、チェリーは熟すことをやめない。大きく丸く熟したチェリーはパーチメントだけの豆より表面積は大きく、チェリー1粒に対してパーチメント3粒ほどのサイズがある。
ここで、なぜ1.5ヶ月から2.5ヶ月という1ヶ月もの幅があるのかを説明する。
何度も言うように、ナチュラルプロセスとは外皮・果肉・種を丸ごと発酵・乾燥させる精製方法であり、微生物が果肉・ミューシレージを分解しながら乾燥段階に入る。どれだけ積み上げるかによって乾燥までの時間をコントロールし、フレーバーを作り上げる。早く乾燥させると比較的バランスの良い爽やかな甘味を生み出し、ゆっくりと発酵・乾燥させるとワインのような重厚感を生み出すことができる。
3. もはや「ナチュラル」ではない、ナチュラルプロセス
ナチュラルプロセスにも数多くの派生系が存在する。近年ラオスでは、いわゆるハイブリット系のカティモールの栽培が盛んである。サビ病やコーヒーベリーボーラーなどの害虫に強いティモールとカトゥーラの交配で、栽培が簡単であり、豆のサイズも大きいため農家に好まれる。ただし、ティピカなどの他の品種に比べると、フレーバーやボディはそこまで優れておらず、自然なナチュラルプロセスで高品質な豆を生産することが難しい。これはラオスに限った話ではなく、コロンビアなど世界中で同じである。
そこで登場するのが*嫌気性発酵 [Anaerobic Fermentation] である。嫌気性発酵とは、文字通り酸素を遮断して発酵させる方法であり、基本的な精製は全て好気性発酵 [Aerobic fermentation]、つまり酸素を利用して行う発酵である。嫌気性発酵を行うことで、より複雑でエキゾチックなフレーバーを楽しむことができる。
例えば、Catimor / Anaerobic Natural [Paksong, LuLaLao farm]であれば、ジャックフルーツやドリアンのようなねっとりしたフルーツ感、そこにラムレーズンのような大人なフレーバーを楽しむことができる。
嫌気性発酵の他には、麹菌を用いたKoji Fermentation、イースト菌をYeast Inoculated Fermentationなど、培養された微生物の力を使う精製方法も増えている。私たちも実験としてKoji Fermentationを行なっているものの、なかなかラオスのチェリーに合う麹菌を見つけることができていない。もし、おすすめの麹菌とレシピがあれば、ぜひ教えていただきたい。
4. アロマやフレーバーの特徴
さて、ここまでナチュラルプロセスについて説明してきたが、読者にとって本当に大切なのは「どんなフレーバーなのか」「自分の好みに合うのか」という点だと思う。
3つの精製の基本「ウォッシュド」・「ハニー」・「ナチュラル」の中で比較すると、ナチュラルプロセスは口当たりはまろやかで重厚感があり、飲んだ後も口いっぱいに甘さが続く。
フレーバーはアメリカンチェリーやラズベリーのような満足感のある赤く熟した果物を連想できる。程よい酸味と果実感たっぷりなコーヒーとなることが多い。
日々のコーヒータイムで、お菓子やケーキなしでも少しリッチな気分になりたい人には、ナチュラルプロセスはおすすめである。
LuLaLo Coffeeが取り扱っているナチュラルプロセス商品
1. [Champasak province] Catimor / Anaerobic Natural Process
2. [Salavan province] Yellow Caturra / Anaerobic Natural Process