コーヒーの世界では、日々新しい加工方法が試されている。その中でも注目を集めているのが「Anaerobic Fermentation アナエロビック発酵」。この発酵プロセスは、コーヒーのフレーバーを劇的に変える力を持っており、特にユニークで複雑なフレーバーを生み出す。今回は、アナエロビック発酵とは何か、その原理、そして「ナチュラルプロセス」「ハニープロセス」「ウォッシュドプロセス」などの「Aerobic Fermentation エアロビック発酵」との違いについて、私たちが農園で実際に行っている手法を基に解説する。
1. [Champasak province] Catimor / Anaerobic Natural Process
2. [Salavan province] Yellow Caturra / Anaerobic Natural Process
3. [Salavan province] Yellow Caturra / Anaerobic Honey Process
▼ INDEX |
1. アナエロビック発酵とは? |
2. 微生物の働きと酵素分解の違い |
3. アナエロビックナチュラルプロセス |
4. 実際のアナエロビック発酵のステップ |
5. その他のアナエロビック発酵 |
6. まとめ |
1. アナエロビック発酵とエアロビック発酵の違い
アナエロビック発酵とは、酸素を排除した環境で行われる発酵プロセス、つまり嫌気性発酵である。収穫されたコーヒーチェリーを密閉容器に入れ、酸素が入らないようにすることで、酸素を必要としない微生物が活発に活動する。
一方、エアロビック発酵とは、酸素を必要とする環境で行われる発酵プロセス、つまり好気性発酵である。コーヒーチェリーを外気と触れるような状態にし、外部から酸素を供給することで、酸素を利用する微生物が活発に活動する。
2. 微生物の働きと酵素分解の違い
アナエロビック発酵とエアロビック発酵における微生物の働きと酵素分解には、明確な違いが存在する。それぞれの発酵プロセスでは、異なる種類の微生物が活動し、異なる化学反応が進行する。
アナエロビック発酵
アナエロビック発酵は酸素を排除した環境で行われる。この環境下で働く微生物は酸素を必要としない種類であり、例えば乳酸菌が代表的である。アナエロビック発酵の特徴的な点は、微生物が酸素の代わりに他の化合物(例えば硝酸塩や硫酸塩)を利用してエネルギーを生成することである。
- 微生物の種類:酸素を必要としない微生物(嫌気性菌)、代表例は乳酸菌。
- 酵素分解:微生物はエネルギーを得るために、果皮や果肉の糖分を分解し、エタノールや乳酸などの化合物を生成する。この過程で、酵素の働きにより糖分が分解され、アルコールや有機酸が生成される。
- 生成される化合物:エタノール、乳酸、エステル化合物。これらの化合物はコーヒーにフルーティーで複雑な香りを与える。
エアロビック発酵
エアロビック発酵は酸素を必要とする環境で行われる。このプロセスでは、酸素を利用する微生物が活動し、糖分を分解する際に酸素を用いる。代表的な微生物にはアセトバクターなどがある。
- 微生物の種類:酸素を必要とする微生物(好気性菌)、代表例はアセトバクター。
- 酵素分解:微生物は酸素を利用してエネルギーを生成し、果肉の糖分を分解する。酸素の存在下で、糖分はアルコールや有機酸(クエン酸やリンゴ酸など)に分解される。
- 生成される化合物:有機酸(クエン酸、リンゴ酸)、アルデヒド類(アセトアルデヒドなど)。これらの化合物はコーヒーにクリーンで明瞭な酸味と香りを与える。
3. アナエロビックナチュラルプロセス
アナエロビックナチュラルプロセスは、アナエロビック発酵の後にエアロビック発酵を行う二段階の発酵プロセスである。この方法では、まず密閉容器でアナエロビック発酵を行い、続いて開放的な環境でエアロビック発酵を行う。
フレーバーへの影響
アナエロビックナチュラルプロセスでは、最初のアナエロビック発酵によって生成されるエステル化合物がコーヒーに複雑でフルーティーな香りを与える。次に、エアロビック発酵が行われることで、さらに有機酸やアルデヒド類が生成され、クリーンで明瞭なフレーバーが加わる。この二段階の発酵により、コーヒーは非常に豊かで多層的な風味プロファイルを持つようになる。
- アナエロビック発酵の影響:エキゾチックな香りが強調される。エステル化合物が豊富に生成され、複雑でユニークな風味が生まれる。
- エアロビック発酵の影響:クリーンで明瞭な酸味が加わる。エアロビック環境で生成される有機酸やアルデヒドが、バランスの取れた味わいを提供する。
アナエロビックナチュラルプロセスとナチュラルプロセスの違い
アナエロビックナチュラルプロセスは、アナエロビック発酵とエアロビック発酵の両方を組み合わせた二段階のプロセスであるが、これに対してナチュラルプロセス(自然乾燥法)は、発酵と乾燥が同時に行われる方法である。ナチュラルプロセスでも微生物が働き、果肉の糖分を分解してアルコールや酸を生成するが、酸素が供給される環境で行われるため、エアロビック発酵が主である。
- ナチュラルプロセス:収穫したコーヒーチェリーをそのまま天日干しや機械乾燥する。この方法では、果皮や果肉の糖分が乾燥中に分解されることで、甘味とボディの強いフレーバーが生まれる。発酵と乾燥が同時に進行するため、自然なフルーティーさと複雑な味わいが特徴となる。
4. 実際のアナエロビックナチュラルプロセスのステップ
- 収穫:完熟したコーヒーチェリーを収穫する。
- アナエロビック発酵:収穫したチェリーを密閉容器に入れ、酸素が入らないようにする。発酵期間は通常24時間から72時間程度である。
- エアロビック発酵:アナエロビック発酵が完了した後、チェリーを開放容器に移し、外部から酸素を供給しながら発酵・乾燥を約45日-60日ほど続ける。
- ハリング(脱穀):乾燥したチェリーからコーヒー豆を取り出す。
5. その他のアナエロビック発酵
アナエロビック発酵は発酵プロセスの一部であり、アナエロビック発行の後に「ハニープロセス」「ウォッシュドプロセス」に進む場合もあれば、パルピング(脱皮)の後にアナエロビック→エアロビックという順番でも可能である。
経験上、大きくフレーバーが変化するのはアナエロビックナチュラルであり、その他はわずかなフレーバーの変化である。それでもアナエロビック発酵させるのは、少しでも複雑なフレーバーを生み出したいという農家の努力である。LuLaLao Coffeeがアナエロビック発酵させる理由としては、アフターテイスト(後味)やマウスフィール(質感)が向上すると感じているからだ。
6. まとめ
私たちLuLaLao Coffeeは、コーヒーは「美味しければ良い」そして「楽しければ良い」という認識です。ただ、コーヒー屋で販売されているパッケージラベルを見て、「精製:アナエロビック」としか書かれていないのは不親切だなと感じる。
- 「精製:アナエロビック〇〇」
- 「精製:〇〇アナエロビック」
このように書かないとフレーバーの想像が難しい。
自然なフレーバーではないと毛嫌いされる方も多いが、アナエロビック発酵によってもフレーバーはバラバラである。ぜひ多くの人に試してもらいたい。特に、牛乳と合わせる人にはおすすめしたい。牛乳に負けない独特のフレーバーがあるため、今までと違うラテやカフェオレを楽むことができる。もちろん、シンプルにハンドドリップでもデザートのような1杯を満喫できる。
1. [Champasak province] Catimor / Anaerobic Natural Process
2. [Salavan province] Yellow Caturra / Anaerobic Natural Process
3. [Salavan province] Yellow Caturra / Anaerobic Honey Process